徹底比較?! EF66 vs. 大阪市交66系

重野 誉敬

0. はじめに

 もともとは「鉄っぽい本」シリーズ各号の発行時のコミケットの番号にちなんで「蒸気機関車C○○」として始まったこの連載、前回からは屁理屈を付けて「電気機関車EF○○」と衣替えをしておりますが、今回はめでたく?EF66の番となります。
 さて、66という数字の鉄道車両と言えば忘れてはいけないのが大阪市交通局の66系電車。
 数字以外にほとんど共通点の見られない?この両形式を無理矢理徹底比較してみるというのがこの企画です。
 なお、本稿に写真が無いのは筆者が取材をサボっていたためですので悪しからずご了承願います。

1. プロフィール

 まずは簡単に両者はどんな車輌なのか、そのプロフィールをごく簡単に紹介してみましょう。

1.1 EF66

 EF66は言わずとしれた旧国鉄→JRの電気機関車です。Eは電気機関車を意味し、Fは駆動軸が6軸、66は番号で50~69までの間は直流高速電気機関車を意味するという事は恐らくはご存じの事と思われます。現在はJR貨物とJR西日本に在籍しており、貨物列車牽引のほか、東海道本線のブルートレインの牽引でも活躍しています。旧国鉄から引き継がれた0番台のほか、分割・民営化後にJR貨物が新製増備した100番台が存在します。有名な車両なので紹介はこのくらいでひとまず終了。

1.2 大阪市交通局66系

 これにくらべれば大阪市交通局の66系は比較的マイナーな車両と言えるでしょう。大阪市交通局には地下鉄と新交通ニュートラムがあり、大阪市営地下鉄には現在7路線がありますが、そのうち6号線・堺筋線を走行する車両です。表1に大阪市営地下鉄の各路線のごく簡単な概要を挙げておきます。東京の地下鉄は1号線:都営浅草線、2号線:東京メトロ日比谷線…と号線番号と路線名の関係が非常にわかりにくいのですが、大阪の地下鉄は比較的常識的?な番号となっているのでわかりやすいのは有り難いです。
表1:大阪市営地下鉄各路線
番号路線名区間電気方式推進方式相互直通運転
1号線御堂筋線江坂—中百舌鳥直流750V 第三軌条式粘着推進北大阪急行
2号線谷町線大日—八尾南-
3号線四つ橋線西梅田—住之江公園-
4号線中央線大阪港—長田近鉄東大阪線
大阪港トランスポートシステム
5号線千日前線野田阪神—南巽-
6号線堺筋線天神橋筋六丁目—天下茶屋直流1500V 架空線式阪急千里線・京都線
7号線千日前線野田阪神—南巽リニアモータ-
表1からわかるとおり大阪市営地下鉄では電気方式が直流750V第三軌条(サードレール)式という路線が多いのですが、66系が走行する堺筋線は阪急千里線・京都線と相互直通運転を行うという事からごく一般的なパンタグラフで集電する架空線式となっています。また、長堀鶴見緑地線のようなリニアモータ推進ではなく、モータで車輪を回して線路を蹴って進むごく普通の粘着推進です。そのような仕様を見る限り、堺筋線は大阪市営地下鉄で唯一「普通の路線」と言えるかもしれません。って、大阪市交通局は全線が鉄道免許ではなく軌道特許(路面電車に多い)であるなど、他の鉄道事業者には見られない特徴があったりするのですけれども傍目にはわからないのでそれはそれということで。
 大阪市交の堺筋線用の車両としては開業当初からの60系と本稿で紹介する66系とがあります。このほか、阪急から3300系などが乗り入れてきます。
 現在は66系は8両編成です。現在は、という言い方をしたのは、1990年の登場当初は6両編成で、後に増結されているからです。MT比は1:1、4M4Tです。
 以上をまとめると、以下のような感じとなるでしょうか。 単機
EF6666系
種類電気機関車電車
製造所年1966年1990年
電気方式直流1500V 架空線式
編成8両(4M4T)
駆動軸6軸16軸
走行線区JR各線大阪市交堺筋線
阪急千里線・京都線
製造両数89両136両

2. 車体・寸法

 さて、前置きが長くなりましたが、いよいよ比較に入ります。まずは外観、車体についてからです。同じ系列でもロットにより仕様が異なる場合があるので、いずれも初期の車両を想定しています。
EF6666系
車体鋼製ステンレス
車体長(連結器中心間隔)18,200mm18,900mm
全幅2,800mm2,845mm
高さ(パンタ除く)3,872.3mm4,080mm
大きさはさほど違いがありませんが、EF66の方が少しだけ小さい、という事になります。続いて重さを比べてみると、
EF6666系
重量100.8t(単機)258.5t(8両編成)
 EF66一両分と、66系3両ぐらいとでほぼ同じ重さとなります。こう見ると機関車がいかに重いかがわかります。
 ただし、電車の方は空車重量ですので、これに乗客の重さを加えてみましょう。66系の乗車定員は編成あたり1108名ですので、これに一人あたり65kgを掛けてみると約72tとなります。仮にラッシュ時に乗車率200%とすると約144tとなり、空車重量に加えてその半分以上の荷重が加わるという事になりますが、堺筋線の最混雑率は平成13年に115%との事なのでそこまでの荷重は掛からないという事になります。それにしても通勤電車というのは自重に対して結構な割合の重さの乗客が乗れるものだと感心させられますね。
 一方、機関車の方は貨車を牽引する訳ですが、EF66の場合には1,000t級の貨車を時速100kmで牽引する事を目指して作られています。1,000tというのは乗車率100%の66系3編成分の重量という事になります。
 さて、重さはともかくとして大きさについてはEF66の方が若干小さい、という事がわかりましたが、図面を見比べてみたところEF66の方が寸法がかなり大きい部分がありました。
EF6666系
車輪直径1,120mm860mm
固定軸距2,800mm2,200mm
 固定軸距というのは台車の二軸の間隔で、いずれもEF66の方がかなり大きくなっています。どちらも機関車として、あるいは電車としてはごく普通の寸法で、一般に機関車は大型の主電動機を台車枠に収める必要性から大きくなっています。
 そうそう。逆に66系の方がEF66に比べて3割以上寸法が大きい部分もありました。
EF6666系
軌間1,067mm1,435mm

3. 主回路・性能

 さて、数字以外の共通点がこれまでのところ「電気方式が直流1500V 架空線式」という事ぐらいしか見当たらないこれら両系列、続いては主回路について比較してみましょう
EF6666系
制御方式直並列切換・バーニア付き抵抗制御・弱め界磁制御VVVFインバータ制御
主電動機直流直巻電動機籠型誘導電動機
主電動機出力650kW180kW
総出力3,900kW2,880kW
最高運転速度100km/h110km/h
 出力はEF66が上回っていますが、荷重時の総重量はEF66が約1,100t、66系がせいぜい400tですから、出力/重量比(パワーウェイトレシオ)で比べると、66系が数倍上回るという事になります。

4. まとめ

 全然違う二種類の車両を無理矢理比較してみましたが、やっぱり共通点はほとんどありませんでしたということで。それでも、数字で比較してみると数字が近いもの、一方が大きいもの小さいもの、いろいろありますね。
 そんな訳で今回は落ちもなくおしまい。次回はEF67です。
原文のpdf版はこちら
QDATトップ過去の作品を訪ねて徹底比較?! EF66 vs. 大阪市交66系カタログ「鉄っぽい本17」

Published on 2004/08/14 / Last updated on 2019/08/01
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